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| ■ 貧乏人のためのCG講座 HIROPON流・お絵かき術 |
■ 「カゲ」について
先日ある方から、「どこにどういう風に影をつけたらいいのか分からない」という質問を頂きました。そこでこの機会に「カゲ」について少し掘り下げて考えてみようと思います。初心者の方にはちょっと話が難しいかもしれませんが…(^^;
| ■ 2つの「カゲ」 |
百聞は一見にしかず。実際の「カゲ」がどうなっているか、まずは下の絵を見てください。
この絵は3DCGソフト「Shade」で描いたものです。空中に球が浮かんでいて、光は左手前からこれを照らしています。そして光の反対側には、光の当たらない部分、すなわち「陰(かげ)」ができています。ソフトの機能的な制約から、この絵では陰の部分がほとんど真っ黒になっていますが、実際の地上の風景では空気による光の散乱や、周囲の物体からの反射といったいわゆる「環境光」によって照らされるので、真っ黒にはなりません。真っ黒になるのは宇宙空間に浮かぶ惑星のような、特殊な場合だけです。
ここでもう1つ気をつけてほしいのは、完全に陰になっている部分の明るさは均一だということです。もし実物を見せずに「球を描いて、陰をつけてください」というと、上から下へ向かってなめらかな明暗のグラデーションを描いてしまう人が少なくないと思いますが、実際にはあるところから急激に暗くなって、陰部分の明るさはどこも同じ、というパターンになります。そう、陰は意外と境目がハッキリしていて、均一なグラデーションにはなっていないのです。
| 厳密なことを言えば陰の部分は完全に均一じゃなくて、例えば床の上に置いてあるものなら、床からの反射で下側がほんの少し明るくなるんだけどね。 | |||
ところで「カゲ」には「陰」のほかにもう1つあります。物体が別の物体に投げかける「影(かげ)」です。
上の絵は同じく「Shade」で描いたものですが、球や机に手前の棒の影が落ちています。この影は、物体同士の距離が離れるに従い、薄く、ぼやけていくのはみなさんが日頃の生活で体験しているとおりです(上の絵で、球に落ちている影と机に落ちている影とを見比べれば分かると思いますが)。
実際の風景の「カゲ」は、この「陰」と「影」の2種類あるわけです。これを頭の片隅に置いておかないと、絵を描く時に困ったことになってしまいます。
| 英語だと「陰」は"shade"、「影」は"shadow"って使い分けてるんだけど、日本語はどっちも「カゲ」で済ませちゃうから、この2つの違い、普通じゃ意識しにくいかも…。 | |||
| ■ 「カゲ」のつけ方 |
それでは実際に、絵に「カゲ」をつけてみましょう。
ここでの最重要ポイントは「光源をしっかり定める」ということです。「カゲ」は光がなければできません。ですから、「カゲ」をきちんと描こうと思うなら、絵の中の光源の位置はしっかり決めておかなければなりません。
また、上のポイントとも関係しますが「視点を1つに定めること」も大切です。自分は絵に描いている物体をどちら側から見ているのか、これを固定しておきましょう。1つの絵の中で視点がずれれば、それは光源の向きのずれ、ひいては「カゲ」のずれにつながります。
難しくてできないよぉ〜という方もいるかもしれませんが、必ず意識だけはしておきましょう。光源もあいまいなまま、ぶれた視点で「カゲ」をつけると、ひどく落ち着かないちぐはぐな絵になってしまいます。
というわけで、この2点を踏まえ、「陰」と「影」を意識して「カゲ」をつけていきます。
まずは設定した光源の反対側に「陰」を描きます。このとき、くれぐれも対象が立体であるということを忘れないようにしましょう。「陰」をつけようとする物体がどんな形をしているのか、常に頭の中で思い浮かべながら描くようにすると、極端にヘンな「陰」にはならないと思います。
次に「影」を描きこんでいきますが、このときは光源に対する物体同士の前後関係を考えるようにします。そうすれば、どの物体の影がどこに落ちるのか予想しやすくなります。
・・・と書いてきましたが、実際には「陰」と「影」を別々に描いているわけではありません。あくまでも「意識の上で」の話です。ただ、このくらいのつもりで描いたほうが、いい結果を生むような気がします。下の図は、実際にどのように光源、そして「陰」と「影」を意識して描いているかの具体例です。ゴチャゴチャしてて、少々分かりにくいですが(^^;
| 「影」はついつい忘れちゃう人も多いけど、これがあると、絵にぐっと厚みが出てくるよ。例えば、腕が身体に落とす影とかね。 | |||
なお、実際の「カゲ」は非常に複雑で、これを濃淡を含めて一気に描こうとするとかなり難しいと思います。まずはアニメの絵のように「カゲ」を「光が当たる明るい部分・やや暗い部分・完全な影部分」といった具合に大づかみに明暗を捉え、必要ならばそのあとで細かく描き込んでいくという方法をとるといいと思います。実際、私もこの方法で塗っていますし。
| ■ 「カゲ」の色について |
さて、今、あなたの描いている絵の「カゲ」は何色になっているでしょうか?ここまで読んできた人なら、よもや「真っ黒」にはしていないと思いますが(笑)
「カゲ」の色を決めるにはRGB方式よりもHSV方式のほうが簡単なのは言うまでもありません。HSV方式は色を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Value)」の3つの要素で表すものですから、V(明度)をいじるだけで簡単に同系色の明暗のバリエーションを作ることができます(参考:「CG知識編」→「色の指定方法」)。しかし、実は単にVだけをいじって「カゲ」の色を作ったのでは不十分なのです。ついついやってしまいがちですが(^^;
Vだけをいじって暗い色を作ると、暗くなるほど急速に元の色が判別しにくくなってきます。しかし、普通の絵に描くような明るい場面においては、「カゲ」の部分といえども色が判別しにくくなったりはしませんよね?そこでこの場合、Vを下げたら逆にSを上げてやると、「カゲ」の部分でも色が立ってきて、鮮やかな絵に仕上がります。
| 明るくする場合はこの逆。Vを上げたらSを下げるようにするわけ。つまり、VとSを反対方向に動かすように、ってことね。 | |||
ただし、夜のような暗い場面では、この原則が通用しないことがあります。上の原則に従えば、この暗さに見合う分だけVを下げると、その分Sを大きく上げなくてはいけません。でも、実際の風景を考えてもらえば分かりますが、暗いところでは光量が絶対的に不足しているので、色は鮮やかさが失われています。もっと暗い「カゲ」の部分はなおさらです(これは、人間の目の中の色彩を感じる細胞の感度が、明暗を感じる細胞の感度に比べて低いためです)。こんなところに彩度の高い色があったのでは不自然ですよね。こういうときにはVだけを動かす or Vを下げると同時にSも下げるようにすると、しっとりと落ち着いた感じになります。
このように、「カゲ」の色の作り方には2つの考え方があるわけですが、VとSを逆方向に動かした方がいいか、同じ方向に動かした方がいいかは、その時々の判断によります。結局のところ、自分の感性を信じましょう、というあたりさわりのない結論になってしまうんですが(^^;
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| 左側の絵は、VとSを同時に下げて髪の毛の「カゲ」を塗ったもの。右側の絵はVを下げる一方、それに見合う分だけSを上げて髪の毛の「カゲ」を塗ったものです。右側のほうは「カゲ」の彩度が高すぎて、ちょっと不自然な感じになってると思うんですが…それとも私の気のせい?(^^; | |
| ■ さらに「カゲ」の色について |
冒頭のあたりでも書きましたが、一見、光が当たっていないように見える「カゲ」の部分も、実は周りから色々な光で照らされています。特に重要なのは周囲からの「反射光」です。単純に言うと、まわりが青っぽかったらそこからの反射で照らされて影も青っぽくなるし、緑が多ければ緑っぽくなるっていうことです。
反射光は当然、「カゲ」の部分だけでなく明るい部分も照らしているんですが、反射光は主光源に比べてはるかに弱いため、明るいところでは目立たず、「カゲ」の部分になればなるほど影響が大きくなるというわけです。つまり、こうしたことまで考えるなら、「カゲ」の色を作るには前節で書いたV、Sの調節だけでなく、H(色相)もいじる必要があります。正直、面倒な話ではありますが、その効果は絶大ですのでぜひ試してみることをお勧めします。
| 例えば上の絵なんかでは、「カゲ」が全体的に紫色っぽくなってるんだけど…分かるかな? | |||
一方、全く違う側面から色相の調節が必要になる場合があります。人間の目は黄色や緑に感度が高く、青に対する感度は低いという特徴があります(光の3原色に対する感度では「緑>赤>青」の順になります)。つまり、たとえ同じ明度であっても黄色は明るく見えるし、青は暗く見えてしまう・・・逆に言うと、「暗い黄色」や「明るい青」は存在しないんです。
暗い黄色がほしいと思ったら、色相を赤方向にシフトしてやる必要があるし、明るい青がほしいと思ったら、色相を緑方向にシフトさせてやらなければなりません。もちろん、明度をいじっても明るさは変えられますが、それだけだと色が濁った感じになりますし、たぶん色相も合わせていじったほうが自然な感じになると思います。
| 調べてみたら、実はこの節の「カゲ」の考え方って、いわゆる「印象派」の理論に近いらしいんだよね。もちろん、HIROPONの下手クソな絵はそんなご大層なもんじゃないけどさ。 | |||
つまり、結論としては「自然な色を作るためには色相、明度、彩度を全部動かせ」という、結論だかなんだかよく分からないような結論になります(^^;
やはり最後は自分の感性と、日頃の観察が決め手ですかね・・・って、延々ここまで引っ張ってきた割に、何の解決にもなっていないような気がしないでもないですが(笑)
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