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「紗夜香の星空喫茶」へようこそ! ここでは夜空を見るときに役立つ、ちょっとしたお話を紹介していくつもりです。これを知っていれば、田舎なんかに行って星を見るとき、お友達から感心されること、うけあいですよ。 先月末、日本のH2Aロケットによって、気象衛星が打ち上げられました。今回は、この人工衛星がどうやって飛んでいるのか?というお話です。 | |||
| ■ 37杯目 落ちて落ちて回って回る−人工衛星が地上に落ちないワケ− |
先月末、鹿児島県の種子島宇宙センターから、新型の気象衛星を載せたH2Aロケットが打ち上げられました。最近はさまざまなトラブルに見舞われ、いまひとつ元気のなかった日本の宇宙開発ですが、久しぶりの明るいニュースに胸をなでおろした人も少なくなかったのではないでしょうか?
打ち上げられた気象衛星は、トラブルさえ発生しなければ今後何年にもわたって宇宙を飛び続け、私たちにお天気の様子を届けてくれることになっています。
と、ここで不思議なことがひとつ。「何年にもわたって宇宙を飛び続け」と書きましたけど、人工衛星はどうして地上に落っこちてこないのでしょう?別に、ずっとエンジンをふかしているわけでもありませんのに…。
え?宇宙は無重力だからいつまでもフワフワ浮いていられるんだ、ですって?なるほど、面白いところに目をつけましたね。でも、これだと気球や波間に浮かぶ小船と同じで、どこに行ってしまうか分かったものではありません(^-^;。それに、宇宙空間といえど、実は地球の周りは無重力ではありません(無重力なのは人工衛星の中だけに限られます。理由はのちほど…)。
学校で物理や地学を習った人なら、もしかしたら人工衛星の動きと万有引力との間に関係があることを聞いたことがあるかもしれません。「万有引力」とは、そう、ニュートンが発見したアレです。しかし、引力が関係あるのなら、それこそりんごのようにポトンと落っこちてきそうなものですが…どうなっているのでしょう?
いきなり人工衛星みたいな大きなもので考えると分かりにくいでしょうから、まずは野球のボールで考えてみましょう。ただし、話を簡単にするために、ここでは空気の抵抗は無視して考えることにします。
では、このボールを投げてみましょう。えいっ!…ん、10メートルくらい先に落ちたようです。今度は涼ちゃんに選手交代。涼ちゃんのほうが運動神経いいから、きっともっと遠くまで飛びますよ(^-^;
| そりゃあ、あの「お嬢様投げ」じゃ飛ばないよね。ってわけで、いっくよ〜!オリャ!! | |||
わぁ、すごい!ずいぶん遠くまで飛んでいきました。とはいえ、最後に地面に落ちてしまうことに変わりはありません。これはもちろん、地球の引力がボールに働いているからです。じゃあ、もっともっと強く投げたらどうなるでしょう?ボールの落ちる場所はどんどん遠くなっていき、ついに地平線の向こう側、落下地点が見えないような遠くまで飛んでいきます。
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Fig. ボールを投げる ボールを投げると地球の引力に引かれて地面に落ちますが、ボールの速度が速くなると落下地点はどんどん遠くに離れていきます。球筋がだんだん地球の丸いカーブに近づいてくることに気をつけてください。 |
この調子でさらに強く投げると、地球の裏側まで達し、さらにさらに強く投げると…ボールが落ちる動きと地球の丸いカーブが一致して、グルッと地球を一周し元の場所に戻ってきてしまいます。戻ってきたボールは、そのまま地球をまた一周して…と、あとはこの繰り返し。これで、ボールは地球を回る人工衛星になったのです。これが、人工衛星が地球を回る原理です。
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ちなみに、冒頭で「無重力なのは人工衛星の中だけ」ということをちょこっとお話ししましたが、これも、人工衛星の飛ぶ原理と関係があります。みなさん、ジェットコースターが急降下したときに、身体がフワッと浮き上がるような体験をされたことがあると思います。これは、ジェットコースターも乗っている人も、地球の引力に引かれて同じ速度で急降下しているためですが…上でお話ししたように、人工衛星は地球に向けて「落下し続けて」いますので、まさに「急降下しっぱなしのジェットコースター」状態(^-^;。そのため、人工衛星の中(&人工衛星と同じ速度で飛んでいる物体)だけは無重力になるのです。
それでは、ある物体を人工衛星にするためにどのくらいの速度で発射する必要があるのでしょうか?上で説明した原理からすると、地球の引力に負けないだけの猛スピードというのは想像がつきますが…その速度は秒速7.9km。時速になおすと、なんと28440km(マッハ27!)というとんでもない値になります。上で野球のボールを例にしましたので、これを人工衛星にするためにどのくらい強く投げなければならないかを身近な例でちょっと計算してみましょうか。
たとえば、速球派の投手としておなじみの西武ライオンズ・松坂大輔投手のストレートの最高速は時速156km。これでもとんでもない速さですが、人工衛星になってしまうボールの速さはこの約180倍にあたります。動いている物体が持つエネルギーは、物体の重さが同じであれば速度の2乗に比例しますから、人工衛星になってしまうボールのエネルギーは松坂投手のストレートの180×180倍…実に3万倍以上にもなります。つまり、野球のボールを人工衛星にしようと思ったら、松坂投手の3万倍もの力で投げなければならないのです。ましてや、人工衛星は大型のものだと何トンもの重さになりますから、これに地球の周りを回らせるにはとてつもない力が必要だというのは分かっていただけるでしょう。人工衛星を打ち上げるのに大きなロケットが必要な理由の1つはここにあるのです。
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| ちなみに、秒速7.9kmより速い速度で物体を発射すると、その軌道は円から楕円へと延びていき、速度が秒速11.2kmになると、軌道は限りなく細い楕円…つまり放物線になって、発射された物体は地球に戻ってこなくなります。さらに、秒速16.7kmを超えると、太陽の引力すら振り切って、太陽系の外へ飛び出していってしまいます。 この3つの特別な速度、秒速7.9kmを「第1宇宙速度」、秒速11.2kmを「第2宇宙速度」、秒速16.7kmを「第3宇宙速度」といいます。 |
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Fig. 速度と軌道 物体を水平に発射すると地面に落ちますが、速度が秒速7.9kmになると着地することなく地球の周りを回るようになります(第1宇宙速度)。さらに速度を上げると軌道は楕円形に延びていき、秒速11.2kmを超えると軌道は放物線になって地球に戻ってこなくなります(第2宇宙速度)。秒速16.7kmまで達すると、ついには太陽系の外にまで飛び出してしまいます(第3宇宙速度)。 |
さて、ここまで「人工衛星に地球の周りを回らせるには秒速7.9kmの速度が必要」とお話ししてきましたが、実はこれ、空気がないと考えた場合に地表スレスレの円軌道を回らせるのに必要な速度です。実際には、地球上には空気がありますので、たとえ地表から秒速7.9kmで人工衛星を打ち出したとしても、空気抵抗でスピードが次第に落ち、結局墜落してしまいます(もっとも、実際に地上で秒速7.9kmなんていう速度で発射したら、墜落うんぬん以前に、摩擦熱で大変なことになりそうな気もしますけど…(^-^;;;)。つまり、人工衛星を安定して飛ばすためには、空気のない宇宙空間まで出なければならないのです。人工衛星の打ち上げにロケットが必要な理由のもう1つはこれです。
なお、人工衛星を打ち上げる地点が高くなれば、その分地球の引力は弱くなりますから、結果としてより遅い速度でも地球の周りを回るようになります。
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| 引力が極端に弱い場合を想像してもらえれば分かりやすいでしょう。引力が弱ければ、ゆっくり発射しないと、引力を振り切って飛んでいってしまいますよね(^-^; |
その代わり、軌道が長くて速度も遅いので、地球を1周するのにかかる時間は長くなります。この関係をうまく使うと、打ち上げ地点の高さを調節することで人工衛星の周期を思い通りにコントロールすることができることになります。下の表は、打ち上げ地点の高度と地球の周りを回らせるのに必要な速度、そのときに地球を1周するのにかかる時間(周期)を示したものです。
| 高さ(km) | 速さ(km/秒) | 地球1周にかかる時間 |
|---|---|---|
| 0 | 7.906 | 1時間24分28秒 |
| 500 | 7.612 | 1時間34分37秒 |
| 1000 | 7.350 | 1時間45分8秒 |
| 5000 | 5.918 | 3時間21分19秒 |
| 10000 | 4.934 | 5時間47分40秒 |
| 35786 | 3.075 | 23時間56分4秒 |
| 50000 | 2.659 | 37時間0分22秒 |
ここで注目してほしいのが、高度35786kmで打ち上げた場合の人工衛星の周期です。高度も周期も、なんかやたら半端な数ですが…じつはこの周期、地球が自転する時間、つまり「1日」とピッタリ一致しているのです。
もし、人工衛星を赤道上空の高度35786kmで、地球の自転と同じ方向に打ち出すと、人工衛星は地球の自転と完全に一致して地球の周りを回ることになり、地上からはまるでその衛星が空の1ヶ所にとどまっているように見えます。これがいわゆる「静止衛星」で、冒頭でお話した気象衛星などは、まさにこの軌道を回ることになっているのです。
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…というわけで、今回はここまで。また次回お会いしましょう♪ | |
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